07 グループホームほのぼの 主任介護職員 ティンクさん

介護未経験者への教育の中で、14年前の自分を思い出した。


「そうだ、私も最初はこうだった。」


業務マニュアルを作成して気付けた、『定着のカギ』とは…。


約3年前、法人内で特別養護老人ホームからグループホームに異動。

初めての異動、且つ初めての「主任」という立場で。


自分自身が色々悩み、感じた中で、業務マニュアルを作ることに。

そして、介護未経験者への教育の中でとても大切なことに気付けたと話してくれた。





‐‐グループホームに異動して、約2年8カ月が経過しました。苦労したことも多かったのではないですか?


「異動の話を頂いた時は大好きな入居者さんと離れたくないって思いが強くて、寂しかったですよね。でも、違う施設でチャレンジができるし、前向きに考えなきゃって。苦労したこともめちゃくちゃ多いし、これからもきっとあると思います。同じ介護施設なのに、施設の種類や場所が変わると、こんなに業務内容とかが違うんだって衝撃を受けました。経験があるとか関係ないし、ゼロからのスタートだなって。」


‐‐特養とグループホームでは色々な面で異なりますよね。業務を覚えるまでが大変だったのではないですか?


「そうですね、覚えることがとても多いなと感じました。特養とは違って看護師がいないので、医療的なことを覚えないといけないし、職員数も少ないので一人一人が色々なことをやらないといけないんだなって驚きました。

私が異動してすぐの時は、ここの施設での勤続年数が長い職員が多かったんです。だから、みんな教えるってことにもあまり慣れていないように感じました。また、みんなやり方が違うので、教えてくれる職員によって、教え方が違うんです。別な職員からは違うやり方を教わったりして、混乱はありましたね。それにやり方が違うと指摘されても、あの人はこう教えてくれたって言えないじゃないですか。

私自身、この問題について変に気を遣って疲れてしまって。本当は職員に気を遣うのではなく、入居者さんに気を遣いたいのになって。それにここの施設は職員が少ないので、人間関係やチームワークってとても大切だと思うんです。こういうことでギクシャクするのは良くないから、なんとかしたいなって思いました。」



‐‐具体的には何か良い解決策は浮かびましたか?


「教育する職員を同じ人にするとか、色々考えましたけど根本的な問題解決にはならないなって。それなら教育する内容を統一しないといけないなって考えました。そしたら、異動や退職に伴って、自施設での経験が浅い職員が増えてきて。教えながら感じたのは業務マニュアルが必要だなって思ったんです。

私もそうでしたが、教えてもらっても実際にその場面になると忘れてしまったりするじゃないですか。また聞くのも申し訳ないし、振り返るのにマニュアルがあればいいのになって。教える職員もそれを見ながら教えたら、統一した内容で教育ができますよね。これだ!って思いましたよ。まあ、マニュアルを作るだけではうまくいかないことも見えましたけど…。」


‐‐そうだったんですね、その辺りも是非聞かせて欲しいです。マニュアルを作る上で大切にしたことはありますか?


「大切にしたのは、マニュアルを作る上での過程です。ひとりで作るのではなく、みんなで作るっていうところですね。他の職員からも意見をもらい、みんなの考え方や大切にしていることを知るところから始めました。あとはやり方を統一するなら、みんなが納得したものを形にしたいって思いました。この時間がとても充実していましたね、みんなの想いを聞くことができたし、コミュニケーションが増えて関係も良くなりました。

 あとは、業務が多いのでひとつひとつの内容を見て分かりやすいものにしたいって思いました。これを機会に必要なものと不必要なものを選別したいとも思いましたね。」


‐‐マニュアルを作るという目的でしたが、職員同士で業務全般を見直す良い機会にもなったんですね。そして、良いものが作れましたか?


「はい、早番や遅番などのシフトによって、どのような業務を行うのかまとめることができましたし、服薬や入浴などひとつひとつの業務内容ごとにマニュアルを作ることができました。形になった時は達成感がとてもありました。それに、マニュアル作成を通して、色々な効果が見えたんです。」


‐‐どのような効果が見えたのですか?


「職員が一人一人責任を持って、丁寧に教えている様子を見ることができました。あとはマニュアル作成や教育を通し、効率や負担軽減を考えたり、自分の介護観を主張したり、以前よりも話し合う機会が増えましたね。会議でも意見が多く出るようになりました。とても嬉しかったです。

 そして、そのタイミングで介護未経験の新しい職員が入職されたので、早速マニュアルを活用して教育したんです。これがあれば大丈夫って思っていましたが、実際には活用してみると課題がたくさんあって…。

まず、業務マニュアルを見ながら教えてみると、細かい部分の記入が全然書いてなくて、口頭で補足する内容がたくさんありました。見て分かるものを作るなら、細かいことも必要に応じて追加しないとなって。

 それと、業務マニュアルがあるからその内容を教えることで頭がいっぱいになっていたのですが、未経験の方に本来伝えないといけない大切なことがあったと気付くことができました。」


‐‐それが先程言っていた、マニュアルを作るだけではうまくいかないことも見えたということですね?


「そうなんです。その方は前職でスイミングスクールの指導員をしていたのですが、高齢者の参加者が多く、そういう関わりを多く持つ中で、この仕事に興味を持ってくれたんですよね。でも、グループホームって認知症を患っている方が集団生活をする場なので、認知症の入居者様とのコミュニケーションにずーっと悩んでいたんです。

 認知症を患っている方への関わり方として、その方の性格とだけ捉えるのではなく、認知症の症状という目線での関わり方や知識を教えることが、業務内容よりも優先すべきだったと反省しましたね。介護の仕事を始めた14年前の自分を思い出しました。そうだ、私も最初はこうだったって。悩みましたもん、どう関わっていいか分からなくて。認知症介護に対する不安を拭うことが先でした、とても良い気付きを与えてもらいました。」


‐‐マニュアルを作ったからこそ、得られたとても大切な気付きですね。今後も未経験の方が入職する機会はあると思いますので、業務マニュアルと共に今回の気付きを活かせますね。


「そうですね。未経験の方にとって、認知症介護は初めて経験することばかりで、疑問と不安、傷付くことも多くあると思います。でも、こちらの教え方と自分自身の経験で徐々に認知症への理解が深まり、不安が軽減していくと思います。ただ、認知症の症状って変化していくので、業務に慣れて独り立ちしたとしても、不安が無くなることはないと思うんです。そんな不安の中にいることを理解し、その職員に寄り添いながら情報を共有したり、その都度最新の情報で教育してあげたりすることが大切だと思いました。せっかく介護の仕事に興味を持って下さったのだから、長く働いて欲しいと思います。長く働き続けてもらうためには、

『その方の不安を軽減し、それを自信に変えて前向きに業務を行って頂くこと』

がカギだと思います。

今回、業務マニュアルを作成し、教育する中で気付くことができました。これが最大の収穫です。」


‐‐マニュアル作りを通して、初心に戻ることができたようですし、何より施設の職員さんの考え方や大切にしていることなどが知れて、チームワークも良くなったと思います。そんな職員さんへ、最後に一言頂けますか?


「チームワークを大切にしている私にとって、悩みながらも前向きに頑張る新人職員さんと、その方を支える先輩職員さんとの関係が、見ていて心が温まります。これからも笑顔で楽しく、グループホームほのぼのを盛り上げていきましょう!

 心を込めて、いつもありがとう。」



2021.12.21

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